焼き菓子で名高い店が、生菓子にも強くなりたいと、石川常務がプリンに挑んでいたところ、完全地産とご当地お土産プロジェクトの存在を知る。とても楽しそうな取り組みだと思った。そして、工夫をすれば、仕事がうまれるのは、工業製品も菓子も同じだと思った。
プロジェクトの趣旨を菓子づくりでも守りながら、しかも菓子としての美味しさを追い求める挑戦が始まった。たまご、牛乳、はちみつなど、プリンづくりに使える食材は、この地元に優れたものがちゃんとある。石川常務は、材料生産者のところへ自ら足を運びながら、食品での完全地産のモデルケースをつくった。
やがて両親の跡を継ぐ彼は、会社の新しい経営理念づくりにも関わった。「真心込めて心をつなぎ、心を満たす。私たちは心の幸せを創造します」
ご当地お土産プロジェクトは、同社にとって、生産者の真心と、自らの菓子に込める真心をつなぎ、この地域のたからものをつくりだす取り組みでもあった。
「伊那谷のたからものプリン」は2種類。ごまプリンとたまごプリンだ。ごまプリンは、国内流通量の1%以下と言われる貴重な国産胡麻を、この伊那谷で無農薬で栽培している駒ヶ根市の企業から仕入れた。プリンを固めるのには、伊那で生産された寒天加工品を使った。甘みには、やはり地元のはちみつを用いた。
一方たまごプリンには少々苦労した。たまごは地元で確保できる。しかし、何度試作を重ねても、たまごとはちみつの甘さが合わない。「味を落として、地元産100%にこだわるより、菓子職人として美味しいものをつくりたい」。
砂糖と生クリーム、バニラビーンズのみ地元で調達できなかったが、完全地産を目指す過程で試行錯誤を重ねることが、ノウハウの蓄積になり、次の商品づくりにもつながることを知った。また、材料生産者の熱意や意欲に触れ、これまで以上に交流が深まったことが大きな財産になった。「うちの素材も使ってみないか」と、他の地元生産者からも複数声が掛かっている。石川では今後、ご当地お土産をシリーズ化する予定で、「お菓子で完全地産のPRをしたい」と語る。
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菓子庵 石川製造業ご当地お土産プロジェクト
完全地産
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